「涙が出ちゃう」といえば、往年の人気アニメ「アタックNo.1」です。主題歌の途中で、主人公・鮎原こずえが涙を流しながら「だって女の子だもん」とつぶやくシーンが流れるアニメが放送されたのは1970年前後のこと。1980年代にもたしか再放送されていました。子ども心に、これはいざというときに覚えておくべきフレーズだと思ったのを覚えています。
■芸能界でもよく見かけます
一向にそんな機会はこないまま時は流れ、気づけば「涙が出ちゃう」のは女の子の特権ではなくなっています。「号泣」で検索すると、プロフィギュアスケーターの織田信成選手に、TBS「あさチャン!」のスポーツ担当・石井大裕アナ、フリーアナウンサーの羽鳥慎一アナと、次々に号泣記事がヒットします。
ちょっと変わったところでは、ボーカルが号泣しながらライブMCをし、客も涙で応えるというロックバンド「BLUE ENCOUNT」。冷房の効いた部屋でライブの動画をぼんやり眺めているといまいち乗り切れないけど、現場にいたら案外あっさり泣いてしまうかも。むしろ、泣いてこぶしを振り上げる側に回ったほうが楽しそうでもありました。
■世間の人々はどう感じているのか
感極まって泣き出す男を女はどう思っているのか。周囲の20代~30代女性に聞いてみたところ、賛否両論さほど分かれず、「うーん、男の子も泣きたかったら泣いていいんじゃないですかね」といった意見が多数。男泣きに泣いたからといってかっこいいとも思わない代わり、くすんくすん泣く姿に母性本能もさほどくすぐられない。ああ、泣いてるなぁと思う程度といった、どちらかというとドライな回答が多く集まりました。
一方、不評だったのは仕事でトラブルに直面したときの涙。「普段は泣いてもいいけど仕事の場面ではやめてほしい」(29歳・アパレル)、「上司に怒られて泣き出した男子社員がいた。怒鳴られたわけではなくて、注意されたに近かったので上司もびっくりしてた」(32歳・商社)などオフィスでの目撃談も続々。泣く男は自宅のみならず、会社にも進出しているらしい。
中には「ちょっと注意しただけの後輩に泣かれてウンザリ。“若い女の子はすぐ泣くからイヤ”とおじさんが言うのを聞くたび、バカじゃないのと思ってたんですが、その気持ちがわかりました。すごく面倒くさい。自分は泣かないようにしようと思った(笑)」(28歳・金融)という声も。泣く男が女子とおじさんの心の架け橋に!
もともと、女性は「女の涙」には冷やかな傾向がありますし、泣いてごまかすという行為に対する嗅覚もだいたい鋭敏です。その意味でいうと、相手が男であれ、女であれ等しく厳しい目を向けると考えたほうがいいかもしれません。まあ、自分も泣いてごまかした経験があるからこそ、そこにある欺瞞にすぐ気づけるという側面もありそうですが。
ちなみに、「男だったら涙のひとつやふたつガマンしろ」派の男性は、「涙が出ちゃうんだもん」派より好感度がやや低め。「自分に厳しいだけならいいけど、他人にも強要しそう」(30歳・不動産)、「『女だったら、料理は取り分けろ。から揚げにはレモンを絞れ。飲みすぎるな』とか言いだしそうで面倒くさい」(28歳・電機)だそうです。果てしなく広がる女子のイマジネーション。油断大敵です。