時事

『石原軍団』に『たけし軍団』…令和の時代、静かに消えゆこうとする「軍団」をあえて尊んでみる

※画像はイメージです

8月17日、昼の情報バラエティ番組『バイキング』(フジテレビ系)が、肺炎のため10日に死去した俳優の渡哲也さん(享年78歳)について特集。同番組に生出演していた元衆院議員のタレント・東国原英夫(62)が、ビートたけし(73)率いる『たけし軍団』の名称は、じつは『石原軍団』が由来だったことを明かした。そのおおよそは、以下のような内容であった。

「たけし軍団は、じつを言うと、石原軍団への憧れというか、それをパロったのが最初なんです」

「石原軍団のコントをやったんです。まったくすべってたんですけど(笑)。そのときに石原裕次郎さんの役がたけしさんで、渡さんの役が僕だったんですよ。今思っても『えー』でしょ?」

「(名称の使用について、たけしさんが渡さんに筋を通す機会があって)そのときに『たけし軍団で行かせていただきます』と師匠がおっしゃったときに、渡さんが、恥ずかしそうにニヤッと笑った。あれがOKサイン。『たけし軍団という名前を使っていいですよ』って、僕はそう思ったんですね。それでたけし軍団を正式に使うようになった」

なかなかにイイ話である。そして、同時に「軍団」と呼ばれ、昭和から平成の初期にかけて一世を風靡した2つの集団が令和の時代、風前の灯火となりつつあるのが少々寂しかったりもする。

ちなみに、石原軍団とは石原プロモーションに所属するタレント全員のことを指す俗称で、世間的に認知された正確な時期は定かではないが、一般的には1979年から1984年にかけて放送された石原プロモーション制作の刑事ドラマ『西武警察』(テレビ朝日系)に登場する『大門軍団』がブレイクしたころからのものだと言われている。たけし軍団が正式に結成されたのは、ウィキペディアによると1983年──まさにどちらの「軍団」も、まだ硬派を尊ぶ20世紀末の感性から生まれた前近代的なネーミングだと言える。

「軍団」ときて、まず頭に浮かぶイメージは、

・入団時期による序列がすべて
・上の命令には絶対服従の超体育会的縦社会
・スキルとして体力・運動能力が不可欠とされる
・(たとえ軍団内に女性が所属していたとしても)ムンムンと香り立つ男の世界
・「軍団」もしくは「カリスマ」に対する妄信的な愛と忠誠

……みたいなところだろうか。いずれにせよ、アイデンティティからジェンダーに到るまで、多様性が重視される “やさしい横社会的な令和” においては、奇異な集団として多くの人たちの目に映ることだけは間違いない。

しかし、こういった時代錯誤的な “古いもの” のなにもかもが悪いわけではない……と、私は思う。ノスタルジックな観点から申しているだけではなく、「浮いている」という事実を逆手にとって、あえてこの「軍団」チックなコンセプトを徹底し、そのズレをアピールポイントとして突っ走るのも、またアリなのではなかろうか? 願わくば、たけし軍団には(※ついでに『軍団山本』も)どんなに「時代遅れ」と後ろ指を指されようと、軍団員すべてがお亡くなりになるまで「軍団」のままでいてほしい。あと、若い世代から、たとえば「お笑い第7世代」あたりから、また「軍団」が結成されたりしたら、それはそれでそのミスマッチ感が面白い気もするのだが……たぶん、やっぱり無理だろう。

シェアする