昔から「こたつで寝ると、風邪をひきやすくなる」と言われています。実際にこたつでうっかり眠ってしまって風邪をひいたことがある、という方もいらっしゃると思いますが、これには大きく3つの理由が関連していると考えられます。
- 上半身と下半身の温度のギャップ
- 体温の上昇による異常な発汗と乾燥
- こたつに入る前からすでにウイルスに感染していた
■上半身と下半身の温度差によって体温調整が難しくなる
はじめに、1つ目の原因を具体的に考えてみましょう。
人間は摂取したカロリーの大半を体温維持のために使っていますが、こたつに入ると下半身は温められ、エネルギーを使用せずに済みます。しかし、上半身は冷気にさらされたままというギャップが生じてしまいます。睡眠中には体温も幾分か低下するので、こたつに入ったまま眠ってしまうと、このギャップにより体温調節がうまくできず、風邪をひきやすくなるのではないかと考えられます。
そのため、どうしてもこたつで眠りたい(?)場合は毛布などで上半身を温めると良いのではないでしょうか。
■不自然な汗をかいて風邪をひいてしまう
次に、2つ目の「体温の上昇による異常な発汗と乾燥」を考えてみます。
人間の体は運動をすると体温が上昇しますが、極端な高体温とならないように汗をかきます。反対に、睡眠中には副交感神経の働きが優位となり、休息を取ろうとする働きによって体温も低下します。体温を保持するために、本来なら汗の量も自然と少なくなるはずなのですが、こたつで眠ると足が持続的に温められて血行が良くなり、不必要に汗をかくことがあります。
このため、眠った状態でかいた汗の気化によって体温を奪われ、更に乾燥した口腔・鼻粘膜、もしくは呼吸を介してウイルスが体内に侵入しやすくなります。ウイルス(例えばインフルエンザウイルス)は、乾燥・寒冷環境下で増殖・活動的になるため、冬季に流行しやすい特徴があります。
1つ目の理由である体温のギャップを解消するためには、毛布などで上半身も温めればよいということでしたが、この2つ目の理由については、マスクなどで口腔が乾燥しないようにすることが対策となります。しかし、眠った状態では自分で汗をふくことはできないので、やはりオススメはできません。
そしてもう1つ、こたつで眠ると風邪をひくと言われるのには、見落としがちですが大きな理由があります。
■実はもともと風邪をひきかけていた?!
例えば、風邪と同じウイルス感染症であるノロウイルスは口から侵入すると、早いときには15時間もすれば便の中に排出されることが知られています。ですが、実際に症状が出現するのは1~2日後ぐらいと、ウイルスの侵入から症状が出現するまでには時間がかかります。
このように、ウイルスの侵入から症状が出現するまで、感染が成立するまでの時間を「潜伏期」と呼びます。
この潜伏期に着目していただきたいのですが、一般的な冬季の風邪の原因となるウイルス感染症の潜伏期が1~数日間程度であることを考慮すると、こたつで短時間眠ってしまったとしても、起きてすぐに風邪の症状が出現するのはつじつまが合わないのではないでしょうか。
つまり、「こたつで眠ってしまって風邪をひく」のではなく、そもそも風邪のウイルスによって体調が悪くなりつつあるため、もしくは疲労困憊(こんぱい)で思わず眠ってしまった、目を覚ますと風邪の症状が表面化した、とは考えられないでしょうか?
■こたつで眠ってしまわないように
最後の理由のように風邪の症状に気がついていないだけということもありますので、こたつで眠ったときに本当に風邪をひきやすくなるかどうか断定できませんが、少なくともこうした経験をお持ちの方はいらっしゃると思います。普段からの疲労が大きい50代以上の方ほど、心地よいこたつで思わず眠ってしまい風邪をひくということは十分に考えられます。
また、こたつにはみかんが付き物というイメージもあります。もしかしたら、みかんに豊富なビタミンCなどが風邪の症状を和らげると経験的に知られていたのかもしれませんね。
ちなみに現在主流の甘くてタネの少ない温州みかん、名前は温州と何となく中国のイメージですが、もともと鹿児島県で見つかった突然変異です(紀伊国屋文左衛門が運んで大もうけしたのは、昔ながらの種の多いすっぱいみかんということです)。(執筆:吉國 友和)
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