元宝塚トップスター・香寿(こうじゅ)たつきさんと笠井アナウンサー
- 香寿たつき…1986年に宝塚歌劇団に入団。1989年にニューヨーク公演メンバーに選ばれるなど、早くから名ダンサーとして存在感を示す。トップスターに就任後、2003年に宝塚歌劇団を退団。現在では舞台を中心に活躍している。
今回お話をうかがったのは、元・星組トップスターの香寿たつきさん。早くから宝塚歌劇団で活躍を見せるものの、その道のりは平坦なものではありませんでした。退団を考えた時期を経て、トップスターへ駆け上がるなど、激動の30代を過ごした香寿さん。そんな香寿さんに、宝塚ファンのフジテレビ・笠井アナウンサーが魅力的な女性になるための秘訣をお訊きしました。
■まず自分の好きなことに没頭してみる
笠井:香寿さんの30代は、どういう感じだったんですか?
香寿:30代は本当に突っ走っていました。5番手くらいからのスタートで、一時期は辞めようかなと思ったこともありました。
笠井:そこからの約10年のあいだに、トップまで上り詰めたのですね。次のステップに進むなかで紆余曲折のあった時代だったと思いますが、当時、香寿さんはどのような日々を過ごしていたのですか?
香寿:常に舞台に没頭していました。最初は踊りが好きでやっていたんですけど、30代になると歌や芝居の楽しさとかもわかってきて「もっとこうしたい、ああしたい」と思って、内面的な部分も考えるようになりました。私は男役で、宝塚の男役を象徴する衣装に燕尾服があるんです。新人からトップまで黒い燕尾服を着るのですが、やっぱり新人が着るのとトップが着るのでは、まるで違うものに見えるんですよ。だから、どんなにシンプルな衣装を着ていても、自分だけの魅力を滲み出すことができるようになりたいと思っていました。
笠井:たしかに内面的な魅力というものは、向上心だけでなく場数を踏まないと備わらないものですよね。30代で自分の歩み方について悩み、次のステップをどうしようかと考えている女性に対して、香寿さんならどんなアドバイスをしますか?
香寿:夢を実現させるために進んでいけば、考え方も次第に変わっていき、当初は見えていなかった新しい道が選べるようになることがあります。まずは、ひとつ好きなことに没頭してみる。もし、それが大成しなくても、何か違うものが得られるはずです。私もそうだったし、そこからまた宝塚でがんばろうと思えました。女性だと、仕事一筋か、仕事と結婚を両立するのか、家事や育児に専念するのか、いくつか選択肢があると思います。その岐路に立ったとき、しっかり「この道を行くんだ」と決めたら、あとで後悔することはなくなると思います。
笠井:先ほども「突っ走っていた」とお話しされていましたが、香寿さんは30代のころにいくつものチャレンジをされてきました。自分が決めた道を信じて進む力は、どこから生まれていたのですか?
香寿:進む力というわけではないのですが、そのころから読書が好きになって、ある本と出会ってから、人と向き合うことをよく考えるようになりました。当時から「私、こういうところ苦手だな」とも感じるようになっていたので、宝塚のなかで歌や踊りにだけ没頭するのではなくて、意識的に広い視野をもつことを心がけていました。
笠井:柔軟に動かれていますよね。進む道がいくつかできたときに「じゃあどっちなんだろう」と思って「やっぱり宝塚もうちょっとやってみようか」という選択は、フレキシブルですよね。
香寿:宝塚の組が替わって重要なポジションに抜擢されたときに、神様が「お前はまだ芸の道が必要だよ」と言ってくださっているんだと思ったんです。あのときの選択が違うものだったら、本当に辞めていたんじゃないかな。
笠井:きっかけを、自分のなかでどう捉えるかですよね。香寿さんの場合はそれをポジティブなエネルギーに変えて、再スタートするという選択ができたのでしょうね。
■自分を縛るものがあるから、がんばれることもある
笠井:いま振り返ってみて、30代のときにやっておけばよかったなと思うことはありますか?
香寿:1回くらい結婚したかったです(笑)。忙しかった当時の反動ではないですが、いまは好きなときに好きなところへ行ったり、好きなときに好きな友達と会ったり、本当に自由に生きています。その一方で、宝塚もそうなのですが、自分を縛るものがあったから踏ん張れたところもあります。
笠井:たしかにそうですね。パートナーも仕事も、生活のリズムを合わせて向き合うものですから。自分が選んだ生き方に多くの時間を割いているということは、それだけ真剣に取り組んでいるということなのでしょう。
香寿:もし、結婚していたら、子どもができて大変に感じたかもしれないし、違う幸せがあったのかもしれない。でも、結局そうなっていないということは、神様が「お前はまだ1人でいて、こっちの道でがんばれよ」って言っているんだなと思っています(笑)。
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