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オーディオがなくても車内で音楽がきける“音響道路”

まもなく到来する秋の行楽シーズンには、自動車で旅行に出かける人も多いと思う。旅先の雰囲気にあったBGMが車内に流れれば、ドライブ気分もいっそう盛り上がる。最近はラジオやCDのほか、スマートフォンをカーオーディオに接続して、音楽を楽しむ人なども多いのではないか。

ところが、ある場所に行けば、カーオーディオがなくても音楽を聴けるらしい。はたして、それは一体どういうことなのだろう? 早速、行ってみよう。

■榛名湖メロディーライン

向かったのは、関越自動車道を群馬県の渋川伊香保ICで下りた先にある、伊香保温泉から榛名湖をつなぐ、群馬県道33号「渋川松井田線」だ。

動画を撮影してきたので、まずはご覧いただきたい。(音量にご注意ください)

この『榛名湖メロディーライン』は、某自動車メーカーのCMでも使われたのでご存じの方も多いかもしれない。道路を走行していて、ある地点に差し掛かると約280mにわたり童謡の「静かな湖畔」が流れるのだ。

メロディーは車内でもよく聞こえるが、道路脇に立ってみると、走り過ぎていく車が奏でるメロディーがより鮮明に聞こえる。またメロディーライン区間の途中に立ってみると、救急車のサイレンの音が遠ざかると低くなっていくような「ドップラー現象」を起こしながら、次々と車が走り去っていく。

ぐんま メロディーライン」を紹介するサイトによれば、メロディーラインは“道路に溝を作り、その上を一定の速度(制限速度)で走ると、走行音がメロディーを奏でる”のだそうだ。道路の表面を見てみると、たくさんの溝が掘られている。この溝の中でタイヤの音が反響して音が出る仕組みなのだ。

音楽をきれいに奏でるコツは、制限速度の時速50kmを保って走ること。速度超過はもちろんいけないが、速度が遅すぎてもダメだ。速度が遅くなると、何度も聴いて伸びてしまった昔の音楽テープのような、間延びしたメロディーになってしまう。

ちなみにこの場所は、峠道の下り坂の先にある見通しの良い直線道路なので、うっかりすると、ついスピードが出てしまう。メロディーラインは観光振興だけでなく、速度遵守をドライバーに促して、交通安全にも一役買っているのだ。

メロディーラインは、群馬県内に全部で11ヶ所あるという。今回は、榛名湖メロディーラインのほかに2ヶ所をまわってみた。

■美しい星空の里、高山村のメロディーライン

次に向かったのは、群馬県渋川市から吾妻郡高山村に向かう県道36号「渋川下新田線」だ。こちらも動画で紹介しよう。

周囲を山に囲まれ、美しい田園風景の残る高山村には夜になれば美しい星空が広がる。「県立ぐんま天文台」も所在し、星空を守るために「光環境条例」が制定されているという。

道中の渋川下新田線のメロディーラインで流れるのは、ディズニー映画でおなじみの名曲「星に願いを」。高山村がもつ魅力にぴったりな楽曲が選ばれている。

■アニメ映画のあの曲もメロディーラインに!

最後に訪れたのは、群馬県吾妻郡中之条町を走る国道353号だ。JR吾妻線の中之条駅前から、山あいにある四万(しま)温泉に向かう途中にメロディーラインがある。こちらも動画をご覧いただきたい。

メロディーは、あの人気アニメーション映画『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつも何度でも」だ。選曲の理由は、メロディーラインの先にある四万温泉に、映画に登場する旅館「油屋」のイメージモデルのひとつとされる老舗旅館があるからなのだそうだ。車での移動中に、この曲が突然流れはじめたら、映画を知っている子供たちはきっと喜ぶことだろう。

ちなみに国道353号は、中之条町四万と新潟県南魚沼郡湯沢町三国とのあいだの群馬・新潟県境が不通区間となっているので、ご注意を。

今回は、群馬県から3ヶ所「メロディーライン」を紹介した。このような“音響道路”は、名称は様々だが、北は北海道から南は九州まで、数多く存在する。自動車で行楽に出かける際などに出会ったなら、旅情に彩りを添えてくれることだろう。

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