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渡れたり渡れなかったり・・・「海上国道」って何?

普段、何気なく歩いたり、車で走ったりしている国道。世の中には、なんだかヘンな、ちょっと変わった国道があるのをご存じだろうか? たとえば、青森県の"階段国道"。津軽半島の龍飛岬(たっぴみさき)付近を通る国道339号線には、一見歩行者専用にしか見えない362段の「階段」だけがある区間が存在するが、これも立派な国道なのだ。もちろん車は通れない。

今回の記事で紹介する"海上国道”も、そんな変わり種国道の一種だ。海上国道と聞くと、写真のように海の上を道路が走っているようなイメージが思い浮かぶかもしれない。「東京湾アクアライン」は、「海ほたる」から川崎側は海底トンネル、木更津側は海上に架かる橋になっているが、これなど、まさしく海上国道のイメージにピッタリではないだろうか。

■フェリーで渡る、不思議な国道

国土交通省によれば、海上国道は以下のように定義されている。

一般に地上につくられた道路あるいは構造物(橋や海底トンネル)はなくても、フェリーボートなどによって、道路と道路とを結ぶ1本の交通系統としての機能があると判断

できるもの。つまり、「橋や海底トンネルがなくても、フェリーなどで海を渡ることができれば、"海上国道”として認める」というわけだ。

たとえば、国道42号は、愛知県田原市の「伊良湖港」と三重県鳥羽市の「鳥羽港」の間が"海上国道”になっている。「伊勢湾フェリー」で通行でき、所要時間55分ほどだ。このような"海上国道”を含む国道は、国土交通省によれば、全国に24路線あるという。

この24路線を1つ1つ調べてみると、なかなか面白い。日本最長の海上国道はどこかというと、九州の鹿児島市から種子島、奄美大島などを経て、沖縄の那覇市へ至る国道58号線で、その大部分が海上区間になっている。なんと壮大な国道だろうか!

■渡れない国道も……

また、すんなりと渡れない海上国道もある。首都圏を環状に結ぶ国道16号線は、神奈川県横須賀市の「走水港」と千葉県富津市の「富津港」の間が海上区間になっている。国道16号線を横浜市側から、横須賀市の観音崎灯台へ向かって車を走らせていくと、観音崎の手前の「走水(はしりみず)」交差点付近で、陸上の国道は終点になっている。道はさらに観音崎灯台に向かって続いているが、ここから先は、国土交通省が管理する"国道"ではなく、神奈川県の土木事務所が管理する"県道"になる。さて、ここから"海上国道”を渡ろうとしたのだが、なんと、「走水港」と「富津港」を直接結ぶフェリー航路は存在しないのだという。千葉県側に渡るためには、近くを航行している、横須賀市の「久里浜港」と富津市の「金谷港」を結ぶ「東京湾フェリー」を利用しなければならない。「走水港」から「久里浜港」までは車で20分ほどかかる。また、千葉県側でも「金谷港」から「富津港」までは、一部有料道路を経由し、30分以上かかるのだ。

国道16号線の海上区間は、厳密に言うと通行不能になっているわけだが、なぜ、「走水港」と「富津港」の間を結ぶ橋や海底トンネル、フェリー等が無いのかについて、国土交通省関東地方整備局や東京湾フェリー株式会社に問い合わせてみたところ、「かつて、横須賀市と富津市を海底トンネルまたは橋梁で結ぶ計画が構想されたが、計画が実現することはなく、事実上の凍結状態になっている。東京湾フェリーは昭和35年から現在の航路を就航しているが、国道16号線との関係性について、詳しい経緯は分からない」との回答だった。

今回は"海上国道”を紹介したが、このような変わり種国道は他にもあるかもしれない。旅先でちょっと注意して、探してみてはいかがだろうか?(写真:森川 孝郎)

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