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コンビニの隣にコンビニができるワケ

コンビニのそばにコンビニができることは珍しくない。その大きな理由としては「競合の出店を防ぐため」「ニーズを捉えるため」の2つになる。詳しく書いていこう。

コンビニを徒歩で利用する場合の最長距離と言われているのが500mだ。当然遠くなれば、徒歩での来店動機は薄れていくわけだ。そこで、出店の範囲が狭まっていく。500m先に競合が出店することで、今まで500m歩かなければ辿りつけなかったコンビニが目の前に出来て便利になる人が出てくる。その人は、当然近くのコンビニを利用するようになる。よって、元々あったコンビニの売上は落ちることとなるわけだ。近くにあって使いやすいというニーズを捉えるための出店だ。

では、元々コンビニがある場所にコンビニを建てて売上は稼げるのか?という疑問が湧くだろう。明確な解答を持っているわけではないが経験則で言うと、コンビニの真隣にコンビニを作った場合、2店合わせると元の1店舗の売上より高くなるのだ。細かいニーズを2店合わせてとらえた結果 なのか、それとも別の理由があるのか……。

もちろん、真隣に競合が建つことは特殊な事例を除いてありえない。しかし、記事にもある通り、100mとかいう超近接立地に競合が出店してくる可能性はある。店舗分析で、100万円の売上を1店舗で稼いでると想定されれば、超近接立地に店舗を建てても60万円の売上予想が立てられる。60万円ならコンビニ1店舗を運営するのに問題ない数値だ。そう考えて、出店攻勢がかけられる。それを防ぐために「自社コンビニを先に立ててしまえば、競合が出店する隙間がなくなる」という戦略を打つことになる。

しかし、この戦略に既存のオーナーの状況は含まれていない。他社のコンビニであれば、品揃え内容やサービス内容によって使い分けてくれる可能性も残っているが、同一チェーンにはその可能性は100%ない。

そこで、昨今コンビニ本部としても推奨しているのが、複数店経営だ。競合店に売上を取られることもなく、自社競合として他オーナーに売上を取られることもないというわけだ。それでも問題は残る。複数店経営というものはそんなにたやすいものではない。

まず、自分に変わる店長の確保。コンビニ契約の多くは、複数店を持つ条件として、自分とは別の責任者を据えることを条件としている。ハッキリ言ってコンビニの仕事は、オーナーのように歩合制だからやっていけるようなものだ。給料制だと、長時間労働や休日の少なさを考えたらやりがいが薄れる。では、高給を支給できるかと言うと難しい。そんな状況下で、家族以外の複数店従事者を見つけることは困難だ。「うちでは無理だよ」。そう言ったら本部は容赦なく他のオーナーを据えてくる。本部にとっては、個のオーナー収益より店舗数を増やして得られる利益の方を優先するからだ。企業体である以上当たり前のことなのかもしれない。

コンビニ契約の条文においても、本部の出店に規制は設けられていないし、それに対して同意する条文もある。オーナーにとっては、自分でやるか or 他にやられるかの2択しかないのだ。そんな状況を、人は「奴隷」と呼ぶのかもしれない。ニュースソース内でも、そんなニュアンスのものが書かれている。昨今では、コンビニの接客力を上げようとどのチェーンも躍起になっているが、果たしてこんな環境下で接客力なんて上げられるものだろうか? 筆者は疑問に感じている。こんなニュースがある。

■「コンビニ顧客満足度」セイコーマートが4年連続トップ

セイコーマートは北海道を中心に店舗展開を進めているチェーンだ。コンビニでは最初にポイントカードを導入したことでも有名である。このセイコーマートの顧客満足度が高いようだ。資料によると、知覚価値、顧客満足度の2つで1位の評価を受けている。知覚価値とは、消費者が製品に対して持つ品質や費用に対す る価値判断のことだが、品質や価格だけではなく心理的価値も含めている。ということは、セイコーマートのお客さんは、買い物に対して商品購入以上の満足を得ていることになる。

簡単に言えば、接客力が高いのだろう。筆者は数回しかセイコーマートを利用したことがないので、満足度の高い要因がどこにあるのか想像するしかないが、多分本部とオーナーの関係がギスギスしていないのだろう。そう考える理由のひとつは、接客というのは人に対する優しさが大切だ。例えば、アルバイトに対して怒鳴り散らすようなオーナーの元で、お客さんに優しさを提供できるだろうか?

出店から施策まで、本部主流で行われているコンビニだが、上記のように本部と店舗の間がギスギスしているようなチェーンで、接客力の向上などできるとは思えない。セイコーマートはその辺を分かっているチェーンなのではないだろうか。筆者の勝手な憶測だが、接客が良いということはそういうことなのだろうと考えている。各々のチェーンがどのようにオーナーに接しているのか、チェーンの接客イメージを見ることで図れるかもしれない。(執筆:川乃 もりや)

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