ライフ

レクサスは「ブランド料」を上乗せしているのだろうか?

レクサス
ブランド物の時計やバッグは、本体の製造コストの他に「ブランド料」みたいなものが上乗せされている、ということは皆さん何となく認識していると思う。しかし自動車業界の場合、少なくとも日本車に関して言えば製造コストに見合う、正直な価格設定をしてきた。ライバル車より極端に高い価格を付けてもユーザーの理解を得られなかった、と言い換えても良かろう。

同じクラスのトヨタ車より100万円程度高い価格を付けて販売しているレクサスも、今まで「コストに見合った価格を付けている」と思われていた次第。「トヨタより優れた部品を使っているから高い」という理解です。というかレクサス自身、そういう主張をしてきた。ところが、である。ここにきて「もしかしたらブランド料を上乗せしてるんじゃないか?」と思われる状況になってきた。

日産はアメリカだとレクサスと並ぶ高級車部門『インフィニティ』で販売している『インフィニティQ70』を日本で『フーガ』として売り始めたのだけれど、何と! レクサスより110万円も安かったのだ。アメリカに於けるインフィニティQ70の価格は、レクサスGSとほぼ同じ。後述する通り、圧倒的に違う安全装備まで考えれば、金額差は150万円にもなってしまう。

参考までに書いておくと、フーガ370Gの502万4160円に対し、アメリカでほぼ同じ価格設定となるGS350は日本で612万9000円。ここまで読んで「装備など違うのではないか?」と思うかもしれない。スペック&装備表を見ると、むしろフーガ優位。エンジン出力GS350の318馬力。フーガ370GTだと333馬力。ナビだって両モデル共に標準装備するなど、フーガ負け無し。

足回りもフーガ245/50R18のレクサスGS225/50R17(18インチはオプション)。ヘッドライトだってフーガ最先端のLEDでGSはHID(LEDはオプション)。決定的なのが安全装備で、フーガを買うと世界最高性能となる60km/hからの自動ブレーキや、側方の死角に他の車両がいた場合、車線変更しないような制御を行う装備まで付く。

日産は伝統的にアピール上手じゃないため、世界トップクラスの安全装備を持つクルマにバリューのある価格を付けてきても、あまり話題にならない。まぁ価格の点は別にしても、高額車を買うような人からすれば「事故を回避できる可能性を持つ装備」はぜひ考えて頂きたいと思う。高性能の自動ブレーキを装備していれば、自動車の社会加害性を大幅に減らせます。

最後にアメリカでの価格を書いておくと、レクサスGS350の4万8600ドルに対し今まで比較対照にしてきた3.7リッターエンジン搭載のQ70(日本だと370GT)は4万9850ドル。排気量200cc大きい分だけ高い。アメリカ市場の2車のライバルと言えばベンツE350で、5万2300ドル(日本で買うと741万円)。日本のフーガの価格設定は正直だと考える。

ちなみに「ブランド料」を否定しているわけではない。逆にレクサスが「ブランド料」を上乗せして売れるビジネスモデルを作れれば、日本の自動車業界にとって新しい歴史になると思う。(執筆:国沢光宏)

<あわせて読みたい>
自動車メーカーはなんでレースに出るのか?
ハイエースの覆面パトカーが増えているので気をつけろ!
なぜ今の日本のモノづくりは、ミニバンに象徴される個性のない存在になったのか?
シェアする