※画像はイメージです
とある乗用車専門系のサイトが、「クルマを所有すれば、どのくらいのお金がかかるのか?」を月割りで試算した数字を掲載していた。もちろん、所有者の在宅地域や年齢によって多少の誤差はあるものの、たとえば1.5〜2リッタークラスの普通車だったら、ザックリだと、
「駐車場代1万円+任意保険料6000円+自動車税4000円+車検代5000円=計25000円」
……といった “月ごとの平均費用” が算出されていた。そして、「2リッタークラスのレンタカーを(月に)2日借りるのとほぼ同額で愛車を持てると考えれば、(クルマを購入するのも)悪くない選択肢なのではないか?」と、同記事を〆ていた。まあ、クルマ好き向けのサイトが出した結論ゆえ、「愛車を持つ」ことにポジティブな論調になりがちなのは、当然だと言える。ただ、「クルマが欲しくない人」は、本当に「お金がかかるから」という理由だけで「愛車の購入」を拒絶しているのだろうか?
ここで私の “クルマ遍歴” を紹介しておこう。最初に購入したのは中古の赤いゴルフ。以降、シトロエン、ポルシェ、クラシックスタイルのベンツSL、ボルボ……と、すべてが “左ハンドル” だった。正直、クルマの性能や美意識には1ミリの愛着もなく、「なんとなくモテそう」といった観点のみから外車ばかりを乗り回していた。いわゆる典型的な「バブルオヤジ」のメンタルである。ちなみに、ポルシェに乗っていたときも、一般道路でも高速道路でも常に法定速度を遵守して走っていた(笑)。最後のボルボのときは、相当な都心に住んでいたため、乗るのは下手すりゃ2ヶ月に1回程度。エンジンをかけようとするごとにバッテリーが上がってしまっていたから、そのつどJAFを呼んでいた。そんなこんなで「私は本質的にクルマに興味がない」という “事実” に気づき、クルマを手放したのは50歳になったころであった。
たしかに、20代の前半から30年近く、一応ずっとクルマを所有していたので、「クルマを手放すこと」に対する不安はいささかなくもなかった。でも、いざ手放してしまえば(少なくとも私のような「本質的にクルマが興味がない」人間は)、お金の問題以前に「クルマを所有していたこと」で生じていたストレスがすとんと抜け落ち、成人して以来、体験したことのない開放感を味わうことができたのだ。
では、その「クルマを所有することで生じるストレス」とは、一体どういうものなのか?
まず、「故障に関するストレス」。とくに私の場合は、古い外車ばかりに乗っていたからか、故障してしまったら最後、修理費用も期間もハンパなかった。古いベンツに乗っていたときは、デート中に箱根の山道でエンストしてしまったこともあった。
次に、「お酒に関するストレス」。クルマで出かけて、急にお酒を飲むことになったとき、いつも、その “置き場” に困っていた。六本木で飲んで、そのまま駐車場に置いといて、次の日に取りに来たら駐車料金が万単位になっていたこともあった。今みたいな「代行」なんてサービスも当時はなかった。
「駐車に関するストレス」も、けっこう切実だった。クルマで出かけたら、必ず駐車する場所まで考慮しなければいけなかった。やむを得ず “違法駐車” せざるを得なかったときは、気が気じゃない。5分ごとに確認作業、レッカーされた日には、もうその後のスケジュールはズタズタ。レッカー代や罰金の額もバカにならないし……。
あと、「事故に関するストレス」。クルマに乗っている以上、「他人の命を奪ってしまう、もしくは自分の命を削ってしまう確率」は、ぐんとアップする。自動車教習所で見せられる「交通事故を起こしてしまった人の悲惨な末路」が現実化することがなくなったのは、私にとって、なによりも大きかった。
誤解してもらいたくはないのだが、私は「クルマを持つな」と言っているわけでは決してない。が、私のような都心に住む者は、とりあえず「自分はクルマが好きかどうか?」をあらためて自問自答してみることだけはオススメしたい。そののちに「好きじゃない」「クルマがなくてもあまり困らない」とのファイナルジャッジが下されたなら、無理して “愛車” にこだわる必要もないのでは? レンタカーやカーシェアで十分なのでは? ……と、今日はそういうお話でありました。