元宝塚トップスター・鳳蘭さんと笠井アナウンサー(photo:岩村 美佳)
- 鳳蘭(おおとり らん)・・・兵庫県神戸市出身。1964年に宝塚歌劇団に入団し、1970年7月、星組トップスターに就任。退団後はミュージカル女優として活躍し、2005年には紫綬褒章を受章。2008年からは自ら主宰するバレエやダンスのスタジオ、鳳蘭レヴューアカデミーを開校。
前回に引き続き、宝塚ファンのフジテレビ・笠井アナウンサーが元宝塚トップスターにインタビューを行いました。今回お話をうかがったのは星組トップスターだった鳳蘭さん。70歳になられた今も、女優としても指導者としても活躍する鳳蘭さんに、人生の信条や若々しく生きる秘訣をお訊きしました。
■第一線での活躍を続ける秘訣は「鶏がらスープ」
笠井:ずっと第一線で活躍されていますよね。鳳さんは何か、強い信条をお持ちのように見受けられます。
鳳蘭:サービス精神ですよ。人を幸せにする。自分の幸せを捨てて、人を幸せにすることが大事。これは全人類に言えることですよ。
笠井:全人類、ですか......。スケールの大きなお話ですね。
鳳蘭:相手の立場になってものを考える人が、今は少ないような気がします。同じように、自分の幸せより相手を幸せにする人も少ない。みんな、自分の幸せしか考えていない。
笠井:サービス精神――それがトップであり続けるためのひとつの信条ということですね。
鳳蘭:そうですね。その心がけは続けています。今も、貴方が楽になるように一生懸命しゃべっているでしょう?
笠井:たしかに。ありがとうございます。鳳さんの仰られるサービス精神を発揮するためのエネルギーは、どこから来ているのでしょうか?
鳳蘭:それはね......鶏がらスープ。
笠井:鶏がらスープ? またずいぶんと具体的ですね。
鳳蘭:小さいころから、鶏がらスープ。中国の家庭ではそれが絶対。4日に1回は炊くんです。私は鶏がらスープのおかげで、ものすごく元気。実は「しんどい」だなんて思うようになったのは最近なんです。それまで「しんどい」とか「疲れた」の意味が、わからなかったもの。
笠井:それはやはり、肉体的にも精神的にも鍛錬されているからというのもあるんじゃないですか? レヴューアカデミーの活動も精力的ですよね。
鳳蘭:はい。昨日もダンスを教えてきました。レヴューアカデミーはね、パリ公演に行ってテレビに出たとき、意地悪な司会者に「よくもパリに日本人がレヴュー持って来ましたね」って言われて。日本人がレヴュー(※大衆娯楽演芸の意)して何が悪いのって、話じゃないですか。それがきっかけで、いずれ日本でレヴューの学校を作りたいと思ったんです。
笠井:宝塚を目指すような生徒さんの他に、年配の方もいらしているとうかがいました。
鳳蘭:ダンスのレッスンに来てますよ。みんな若いですよ~。ダンスをやっていると。
笠井:鍛え続けていると、やはり違うものですか?
鳳蘭:絶対に違います。笠井さんも、普段の移動で一駅くらいであれば歩くことをおすすめしますよ。
笠井:はい......意識するようにいたします。先ほど鶏がらスープのお話も出ましたけど、食事の習慣などで気をつけていることはありますか?
鳳蘭:最近は塩分控えめですね。買い置きの塩が、減らなくて減らなくて。カチンカチンになってます。
笠井:そんなに使わないものですか?
鳳蘭:なるべく使いません。塩が効いていないと、まっずい料理もありますけどね。外食のときは塩分をとらざるを得ないですから。
笠井:おいしくないと自分で思っても気を付けているなんて、ストイックですね。
鳳蘭:自分でもものすごいストイックだと思いますよ。このあいだ風邪をひいて1週間家にいたときも、塩分控えめで吐きそうになるくらいまずい食事をしていました。
■「人間万事塞翁が馬」嫌なこともいつか糧になる
笠井:落ち込んだときの気分転換には、何をされていますか?
鳳蘭:落ち込んだときは映画を観るかゴルフに行くか、ですね。それ“しんどい人”は遠ざけています。本当に私のことを思ってくれるいい人としか付き合っていません。昔はサービス精神で「嫌な人ほど会って好かれよう」なんて思っていましたけれど、最近はしんどいです。でもそういうわがままが許されるのは、この年齢になってからだと思いますが。
笠井:たしかに、若いうちはそうも言ってられませんよね。それこそ、サービス精神で無理してやっていたと。
鳳蘭:そうです。今は、舞台に立ったときのお客様にだけですね。
笠井:生きていく上での“心の持ち様”みたいなものは、ご自身のなかにありますか?
鳳蘭:「人間万事塞翁が馬」っていう言葉が大好きなんです。なにか嫌なことがあっても、3年後、5年後、あの嫌なことを経験したおかげで春が来たと思えることがあるかな、なんて。苦しみと捉えないで「いつか何かの役に立つ、糧になる」と思うようにしています。
笠井:なるほど。舞台はいつまで続けて行きたいと思っていますか?
鳳蘭:台詞を覚えられなくなったら辞めないといけないと思っています。舞台って、ものすごい孤独なんです。テレビや映画は撮り直しができるけど、舞台は台詞を忘れた段階でおしまい。だから舞台って本当にこわいんですよ。
笠井:こわいけれど、やっぱり舞台が好きなんですよね。
鳳蘭:好き。舞台に立っているときだけがストレスから解放される時間ですから。役の人物になっているときは、その人のストレスは演じきれないもの。そこにはストレスは存在しないから、楽しい。笠井さんもまだまだお若いので、アナウンサーというお仕事のなかでいずれ深く理解できるはずだと思います。どの仕事でも、好きな仕事であれば、みんな同じなのではないでしょうか。
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