ブログやSNSで毎日のように暴言を吐かれ、日常のことを書き込んだだけで炎上する…“炎上芸人”ことNON STYLE(ノンスタイル)井上裕介さん。「捕まれ」との書き込みには「恋の窃盗罪で?」、「ウザイからTwitterのフォロー解除する」には「今までフォローしてくれてありがとう!」などなど 、数々の悪口を自分の中でプラスに転換し、前向きに切り返す手腕は実に見事だ。
この厳しい世の中を生き抜くには、彼のスーパーポジティブに大いに学ぶところがあるのではないか!? とインタビューを敢行。ネガティブな現状をポジティブに脳内転換する術を教えてもらった!
井上裕介さん
お笑いコンビ「NON STYLE」のツッコミ担当。ボケ担当の石田明と2000年5月にコンビ結成。2007年、「NHK爆笑オンエアバトルチャンピオン大会」優勝、2008年「M-1グランプリ2008」優勝、「よしもとブサイクランキング」3年連続首位獲得で殿堂入りなど、数々の輝かしいタイトルを持つ。著書に『スーパー・ポジティヴ・シンキング』(ヨシモトブックス)。現在日めくりカレンダー『まいにち、ポジティヴ!』がヒット中。
■「無関心」を「好き」にはできないけれど、「嫌い」は「好き」に変えられる
――井上さんのブログやTwitterを見ると、一般人からの悪口が多くてビックリさせられます。普通の人ならばきっと凹んでしまうと思いますが、どうして井上さんはポジティブに捉えられるのでしょう?
「イヤよイヤよも、好きのうち」ってよく言いますよね? 悪口だろうがなんだろうが、「嫌い」という感情が生まれている時点で、その人が僕のことを認識し、気にしてくれているという証拠。だから、嫌ってくれてありがとう! ぐらいの気持ちで捉えています(笑)。
「嫌い」という感情は、僕の努力次第で「好き」に変えることができますが、「興味がない」状態を好きに転換させるのは至難の業です。
おいしいレストランって、繁盛する。一方で、「あの店、クソまずいで~」と評判のお店も1回は行ってみたくなる。でも、可もなく不可もなしの普通の店って、なかなか足を運ばないですよね。それと同じだと思っています。
人の印象に残っている時点で、生きている意味がある。「こいつ、ウザイな」と思っていた人が僕たちの漫才を見て「面白い」と思ってくれたら、「結構おもろいやんけ→好きかも」に切り替わる。嫌われていることに悲観的になる必要なんて、全くないんです。
そもそも、顔の見えないネット上での言葉なんて、痛くも痒くもない。だって「悪口を書き込んでいる状況」が分からないでしょう? 友だちと一緒にふざけて書き込んでいるかもしれないし、1人でメシを食べながら暇つぶしに書いているだけかもしれない。状況がわからない相手の悪口にリアリティが持てないんです。
今の世の中、ネット上でのリアリティのない言葉に、受け手がリアリティを感じすぎるから、いろいろな問題が起きているのだと思います。昔、ネットがなかった時代のひそひそ話が、文字になって見えちゃっているだけだと思うと、気が楽になりません?
■怒るのにだってパワーがいる。怒られているうちが華と思おう
――では、リアルに面と向かって悪口を言われたらどうでしょう?
ネットと一緒ですね。いくらひどいことを言われたとしても、その人の人生の登場人物に僕が入っているということ。いくらでも巻き返しできます。
まだ売れていない頃、よく先輩に理不尽に怒鳴られたりしましたよ。昔はイラっとしたこともありますけれど、怒るのだってパワーがいる。どうでもいい人に怒り散らして、余計なパワー使いたくないですものね。
それに、「今よりも良くなってほしい」と思うから、怒るわけです。先輩になって実感しましたが、僕だって可愛がっている後輩じゃないと怒らないですよ。それ以外の後輩には、絡みもしない。そんなもんです。
もし読者の皆さんの中に、上司や先輩に怒られまくって凹んでいる人がいたら、期待されているんだと思ってください。そして、理不尽な罵倒の中に隠れている「成長のための肥料」を見つける努力をしてみてください。
まぁ、中にはまったく肥料を見つけられない、単なる罵倒というケースもあるでしょうけどね。そんな場合は、「怒れば怒るだけ体力使うし、血管切れるで…。一歩ずつ寿命に近づいてるで…クスクス」と思っておけばいいんです(笑)。
最近の若い子は、ガツンと怒られると凹んで、自信を失ってしまう子が多いけれど、人の感情って大きく分けたら「喜怒哀楽」の4つしかない。生きていく中で、「怒」を避けて通れるはずなんてないんですよ。4分の1もの確率があるんだから、怒られたって仕方ないと思うことも大切ですよ。
■自分より下のヤツを見つけて優越感に浸り、自信を取り戻す
――最近では、「自分になかなか自信が持てない」という若い人も多いようです。自分に自信が持てないとき、井上さんならどうしますか?
僕ならば、「自分より、自分に自信を持っていない人」を見つけますね。自分が最下位だと思っているから、自信がなくなるんです。だから、「もっと下」を探す(笑)。相手が自分のことをどう思っていようがいいんです。自分が、「あいつは俺より下や」と思える相手ならばいい。そういう相手を見つけたら、できるだけ一緒の時間を過ごして「俺、こいつよりデキてるな。頑張れてるな」と優越感に浸ります。
「優越感」って、大事ですよ。みんな一生懸命仕事を頑張って、でも上司や先輩に叱られて…心も体も疲れているじゃないですか。優越感は、ゲームにおけるセーブポイントみたいなもの。ああ、俺だって捨てたもんじゃないなと思えれば、体力回復! また次頑張ろう! と思えるものですよ。
だから僕、後輩とばかりつるんでいるんです(笑)。彼らよりは売れているという自信がありますし、彼らはみんな、僕をめっちゃ褒めてくれますからね。
■小さくても何かで「1勝」できれば、その喜びを味わいたくてまた頑張れる
もう1つ。なかなか自信が持てないときは、「小さくてもいいから、まずは何かで1勝する」という方法もオススメです。
僕らがまだ賞レースでぜんぜん勝てなかった頃のこと。何回チャレンジしても勝てなくて、負けが込んでいくほどに自分たちのネタに自信がなくなっていきました。自信がない状態で次のレースに臨むから、また勝てない。負のスパイラルに陥ってしまったんです。
そんなとき、これがだめならもう辞めるしかないか! と開き直って出場した「ABCお笑い新人グランプリ」で、ちょっとした運に恵まれて「審査員特別賞」という小さい賞をいただいたんです。でも、それがすごく自信になりました。1位じゃないけれど、賞は賞。自分たちのやってきたことが認められたんだって。それに、周りの人の目も、「負け続けているNON STYLE」ではなく「何か賞を取ったNON STYLE」に変わった。小さな実績ですが、「こいつら、何か持ってるんやないか?」という目で見てもらえるようになったんです。
だから、どんな分野でもいいから自分で「勝った!」と思える経験をすることは大事です。一度勝った喜びを知れば、自信もつくし、周りの見方も変わる。そして「アレをまた味わいたい」と頑張れるようになります。
「今の環境では、勝てそうなものがない」と言うならば、「勝てる場所に移って勝負する」のも1つの方法ですが、みんな絶対に何らかの「勝てるポイント」を持っているはずですよ。パソコン打つのがめっちゃ早いとか、字がめっちゃキレイとか、何でもいい。「勝つ」までいかなくとも、少なくとも「仕事がデキるあいつよりも、字はめっちゃキレイやで」という優越感は持てる。小さい優越感を積み上げれば、大きな自信につながりますよ。
■ネガティブを抱えて1日を終えたくない。幸せな気持ちで眠りに付き、明日に備えたい
――本当にスーパーポジティブですね。落ち込んだりすることは、全然ないのですか?
いやいや、ありますよ。誰かに何かを言われて落ち込むことは少ないですが、仕事が忙しすぎて疲れたり、ストレスが溜まったりして気分が落ちることはあります。
でも僕、気持ちが下がったまま、1日を終えたくないんです。だって、ネガティブな気持ちのまま寝てしまうと、翌朝起きた時もネガティブなままでしょう?
だから、いくら疲れていても、後輩を連れて飲みに行ったり、キャバクラに行ってきれいな女の人にチヤホヤしてもらって、気分を上げてから家に帰ります。誰もつかまらないときは、大好きなマンガを読んで幸せな気持ちになってから寝ます。
毎日寝るときに思うんです。万が一、眠ったまま死んでしまったとしても、「楽しい人生やった」と思えるような1日の終わり方にしたいと。ネガティブな気持ちで眠りに就き、もしも二度と目が覚めなかったら…死んでも死にきれません! いつ死んでもいいように、「今日できることはできる限りやって、充実した気持ちで1日を終える」を心に決めています。
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いかがでしたか? 「意外に共感できる」と感じた人も多いのでは? 芸人とビジネスパーソンとで職業の違いはあるものの、井上さんの「転換力」は毎日の仕事をポジティブに捉えるためのヒントになりそうですね。
▼次回は、ビジネスパーソンが遭遇するタフな状況を井上さんならどのように捉えるかを詳しく伺いました。心に響く金言がいっぱいです!
▲大ヒット中!の「日めくり まいにち、ポジティヴ!」ヨシモトブックス・刊
EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭
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