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セブンのドーナツ全面リニューアルは成功するのか?

セブンイレブンは1月19日、セブンカフェドーナツを全面刷新し、新たに6種類のドーナツの販売を開始しました。果たして、新たなドーナツとはどのようなものなのか? 製品を全面刷新した背景には何があるのか? マーケティング的な視点から掘り下げていきましょう!

■なぜ、セブンイレブンはセブンカフェドーナツの全面リニューアルに踏み切ったのか?

2016年1月19日、セブンイレブンはこれまで販売していたセブンカフェドーナツの原料と製法を大幅に見直し、新たに6種類のドーナツを投入しました。

2014年10月に全国で発売が開始されてわずか1年余り。

セブンイレブンは、なぜこのタイミングでセブンカフェドーナツの全面刷新を図ったのでしょうか?

実のところ、セブンカフェドーナツは当初の計画よりも売れなかったという背景があるのです。

セブンカフェドーナツの全国発売を発表した当初は年間6億個の販売目標をぶち上げたものの、ここ1年の販売は4億個程度に落ち着いた模様。販売実績としてはまずまずながら当初の高い目標に比べれば未達感が否めず、今回販売のテコ入れを行うために、新たな原材料や製法で製品を刷新し、爆発的に売上を伸ばしたいという思いを込めて全面的なリニューアルに着手したというわけです。

■新しくなったセブンイレブンのドーナツ

新しいドーナツを入手しましたので、まずは新製品を紹介していきましょう。

1.チョコオールドファッション
1品目はドーナツの定番と言ってもいい『チョコオールドファッション』(税込100円)。サクサクとした食感に強烈なチョコレートの甘みがクセになる逸品です。


チョコオールドファッション(税込100円)

2.きなこドーナツ(豆腐・豆乳・おから入り)
続いて2品目は『きなこドーナツ(豆腐・豆乳・おから入り)』(税込100円)。きなこもちを彷彿とさせるテイストですが、あっさりとしていて食が進みます。


きなこドーナツ(豆腐・豆乳・おから入り)(税込100円)

3.ツイストドーナツ
3品目は『ツイストドーナツ』(税込110円)。ツイストドーナツは一般的なドーナツですが、セブンカフェのツイストドーナツはもっちりした感じで甘くないのが特徴。シュガーパウダーが上品な甘さを演出しています。


ツイストドーナツ(税込110円)

4.カスタークリームドーナツ
4品目は『カスタークリームドーナツ』(税込120円)。ドーナツの中にとじ込められているカスタークリームは本格的でほどよい甘さ。コーヒーによく合うドーナツです。


カスタークリームドーナツ(税込120円)

5.チョコ&ナッツドーナツ
5品目は『チョコ&ナッツドーナツ』(税込130円)。もちもちしたドーナツの食感に濃厚なチョコの甘みがとてもマッチした一品。さらにナッツのトッピングで、ザクザクした食感と香ばしさが加わり、ワングレードアップを演出しています。


チョコ&ナッツドーナツ(税込130円)

6.濃厚キャラメルドーナツ
最後の6品目は『濃厚キャラメルドーナツ』(税込138円)。ネーミングにたがわず、キャラメルが濃厚で、甘みが尾を引くドーナツに仕上がっています。


濃厚キャラメルドーナツ(税込138円)

(※ドーナツの説明は執筆者の個人的な見解になります。)

それでは、セブンイレブンがとったセブンカフェドーナツのリニューアルは、果たして成功するのでしょうか? 市場の分析と今後の課題について解説します!

■セブンイレブンは、セブンカフェドーナツを成功に導くために何が必要か?

ドーナツ市場は、富士経済の調べによれば、セブンイレブンが参入する前の2013年には1,173億円規模。うち、業界首位のミスタードーナツの売上高が1,030億円と、リーダーのシェアがおよそ9割に達する独占市場といえます。

2014年以降は、このミスタードーナツが支配するドーナツ市場に、セブンイレブンを始めとした、ローソン、ファミリーマートなど大手コンビニエンスストアチェーンが斬り込む『ドーナツ戦争』を繰り広げてきたわけですが、中でもセブンイレブンは後発組といえども売上高は2015年2月期で3兆7,812億円に達し、店舗網も1万6千店舗を超える圧倒的強者といっても過言ではありません。

ドーナツ市場といういわばニッチなマーケットの圧倒的リーダーに対して、小売業の圧倒的強者が戦いを挑む構図となりますが、セブンイレブンがこの戦いで勝利を収めるためには、“包み込み戦略”が効果を発揮するでしょう。つまり、現状業界のリーダーであるミスタードーナツの戦略を自社に取り込んで、顧客を奪っていく戦略です。

具体的には、以下のような4つの戦略が考えられます。

・プロダクト戦略
プロダクト戦略では、徹底的にミスタードーナツの味に近づける必要があるでしょう。特にミスタードーナツ以上の味を追求した製品を開発できなくても構わないのです。ただ、ミスタードーナツのドーナツは、各店でその日販売するドーナツを手作りで生産しており、それが差別化要因になっています。セブンイレブン各店でドーナツを手作りで作るというのは、現実的に難しいでしょうから、工場生産でいかに手作りの味に近づけるかが課題となります。今回のリニューアルがプロダクト戦略で成功しているか否かは、顧客の評価が待たれます。

・プライス戦略
プライス戦略では、圧倒的な低価格が成功の鍵を握ります。プロダクト戦略で、ミスタードーナツ以上の製品を追求しないと決めて同等の製品を販売するなら、顧客から選ばれる要因は主に価格となります。この価格でミスタードーナツよりも圧倒的な低価格を提供できるのなら、顧客を奪うことも可能になるのです。規模の利益をフル活用すれば、コスト削減も十分可能であり、コストリーダーシップ戦略でマーケットシェアを拡大することもできるようになるというわけです。

・プレイス戦略
プレイス戦略においては、セブンイレブンの1万6千店舗に対してミスタードーナツの1,300店舗と10倍以上の差がついています。この意味で圧倒的にセブンイレブンは優位に立っていますが、販売方法という観点からは改善の余地があるかもしれません。現状、レジの横に専用のボックスを用意して、注文を受けてから店員がボックスから取り出すというオペレーションになっていますが、レジ待ちのお客が多い時などに、注文から精算までに時間がかかるという理由で、購入を躊躇する顧客も中にはいるようです。そこで、陳列を変えてセルフサービスにすることなどによって、お客の注文に対する障害を取り除くことも可能になるでしょう。

・プロモーション戦略
業界最大手のミスタードーナツでは、頻繁にドーナツ1個100円セールスや限定商品とのセットなどのプロモーションを展開しています。セブンイレブンでも、コーヒーとセットで購入すれば割り引くというようなプロモーションを展開していますが、もう少し目立つような形でプロモーションを展開すれば、売上をさらに促進することができるはずです。

カウンターコーヒーでは、大きな成功を収めたセブンイレブンですが、ドーナツでは現状苦戦しているといっても過言ではありません。今回、全面リニューアルに踏み切りましたが、分析の通り、セブンイレブンが打つべき戦略はまだあるといえるかもしれません。

果たして、今回の全面リニューアルで目論み通りの売上を上げることができるのか?

その結果の行方に注目していきましょう。

(執筆:安部徹也)

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